東北・北関東大震災と円相場

短期的には、中東情勢の混乱、わが国の震災による先行き不透明感から、ドル円相場にはダウンサイド・リスクが残る。ただし、円売り介入に対する警戒感も強く、欧州では利上げ観測と財政懸念が交錯するため、主要3通貨に明確なトレントを求めるべきではない。あえて言えば、中国の引き締め政策を受けた中国元買いが望ましい。しかし、わが国経済が震災被害からの復興期に入り、中国経済の減速が明確になり、加えて、米国の量的緩和の解除が現実味を帯びてくれば、円の独歩安トレントが明確となる可能性が高い。ドル円相場は、2011年年末に向けて90円台へ向かっていくとみている。

第二の要因「東北・北関東大震災と円相場」

3月11日に発生した東北・関東大震災は、中長期的に大幅な円安をもたらす公算が高い。

復興期にかけて大幅な円安

ドル円相場は、震災による混乱を受けて3月17日、これまでの史上最安値(1ドル=79円75銭)を更新し、76円25銭まで上昇した。その後、G7の通貨当局による協調介入によって、ドルは、81円台へ反発している。しかしながら、引き続き混乱期には、リスク忌避(Risk Aversion)から、ドルが再び70円台に下落する可能性を排除することはできない。

 

為替市場は当面は円高基調が続くものの、それに続く復興期が展望できるようになれば、円は大幅に下落する公算が高い。膨大な復興需要によって、2010年第4四半期において20兆円にのばった需給ギャップが解消される見通しもあり、日本経済は、低成長・デフレ・円高の悪循環から、高成長・インフレ・円安の好循環に転換する可能性が大きいからだ。

 

膨大な政府債務によって、復興需要のファイナンスに対する懸念が出ているが、それは妥当ではない。子ども手当等の財源を復興に振り向けるといった予算の組み替えによって、財政赤字の拡大はある程度抑制される上、最終的には拡大した財政赤字は、国内の貯蓄余剰によって十分吸収することは可能だ。

デフレ・ギャップの解消へ

復興需要によるデフレ・ギャップの解消は、次のような流れを経て円安を招来すると考えている。

 

1)復興需要はすべて国内需要であるため、復興期の高成長は、内需拡大による経常収支黒字の大幅な縮小を伴うことになる。 2010年の経常収支黒字は17兆円にのぽるが、復興需要と震災による生産能力の減少によって、復興期には、経常収支が赤字に転じる可能性もある。

 

2)復興需要による好景気は、国内投資家のリスク選好の増大を通じて、対外投資を助長する可能性が高い。2010年12月末におけるわが国の個人投資家の対外投資比率は2.7%といぜん著しく低く、対外投資余力は十分に残されている。

 

3)デフレ・ギャップ解消によるインフレ率の上昇は、購買力平価や実質金利低下の観点から円か下落すると考えられる。

 

4)一部で報じられたように、10兆円を超える「復興国債」を日銀が引き受けた場合、復興期における円金利の上昇が先送りされるため、円安の確度は一段と高まる。