信用格下げ相次ぐ南欧諸国

短期的には、中東情勢の混乱、わが国の震災による先行き不透明感から、ドル円相場にはダウンサイド・リスクが残る。ただし、円売り介入に対する警戒感も強く、欧州では利上げ観測と財政懸念が交錯するため、主要3通貨に明確なトレントを求めるべきではない。あえて言えば、中国の引き締め政策を受けた中国元買いが望ましい。しかし、わが国経済が震災被害からの復興期に入り、中国経済の減速が明確になり、加えて、米国の量的緩和の解除が現実味を帯びてくれば、円の独歩安トレントが明確となる可能性が高い。ドル円相場は、2011年年末に向けて90円台へ向かっていくとみている。

信用格下げ相次ぐ南欧諸国

利上げ観測が高まる一方で、欧州の財政不安は煉り続けている。ムーディーズは、3月7日、ギリシヤの信用格付けを「B1(シングルBプラスに相当)」に3段階引き下げると発表した。EU等の支援下で財政赤字の圧縮を進めているものの、デフォルト・リスクがなお高いと指摘し、格付け見通しも「ネガティブ」としている。

 

さらに、ムーディーズは同月10日に、スペインの格付けを「Aa2(ダブルAに相当)」に1段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」とした。また、同月15日には、ポルトガルを「A3(シングルAマイナスに相当)」に2段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」と発表している。

 

ポルトガルでは政局が混乱している。同国議会は3月23日に財政再建に向けた追加緊縮策を否決し、ソクラテス首相は辞任を表明した。今後はガバコシルバ大統領が与野党と対応を協議するが、現政権は崩壊し5〜6月に総選挙が実施される公算が出ている。

 

4月15日に43億ユーロ、6月15日に49億ユーロの多額の国債償還を控え、この間に政治空白が発生する恐れが出てきた。このため、ギリシヤやアイルランドに続き、ポルトガルがEUとIMF(国際通貨基金)に金融支援を要請する可能性が高まっている。ポルトガルの危機が深まれば、スペインやイタリア等に不安が飛び火するリスクが出てくる。S&Pは、ポルトガルの政局混乱を受けて、翌24日、同国の長期信用格付けを、「トリプルB」に2段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」とした。

EUの政策対応が焦点に

ポルトガルの政局混乱を受けて、同国の国債利回り(10年物)は、3月25日の欧州市場で、ユーロ導入以来、初めて8%まで上昇した。一方、EUとIMF(国際通貨基金)への支援要請を巡っては、ルクセンブルクのユンケル首相が「750億ユーロが妥当にみえる」との見解を示した。EUには現在、融資上限として2,500億ユーロ程度の欧州金融安定基金(EFSF)や、欧州委員会による600億ユーロの債券発行という金融面でのセーフティー・ネットがある。アイルランド向けに発動したものを差し引いても、ポルトガル支援の財源が枯渇する可能性は小さい。

 

EFSFの融資可能額は、2011年6月末までに名目上の4,000億ユーロにまで引き上げられる計画があり、財政危機がスペインやイタリア等に伝播した際にはこの措置が不可欠となる。ただし、実現に向けてはフィンランドの内政がカギを握る。4月17日に同国で開催される総選挙の結果次第によって、期限までの引き上げが困難となるリスクがあるため、引き上げ措置が予定通り実施されるかは重要な注目ポイントだ。

 

6月に欧州銀行監督機構(EBA)が発表する銀行のストレス・テスト結果も注目される。 2010年のような当初より資本不足を回避するような甘い査定内容であれば、再び市場の洗礼を受けることとなろう。財政不安によるユーロ下落圧力は引き続き継続しよう。